慢性疼痛の評価法

Medical Tribune
[2006年4月6日 (VOL.39 NO.14) p.22]
第35回日本慢性疼痛学会
慢性疼痛の評価法-最近の動向


慢性疼痛は,警告反応の意味が少なく,バイタルサインへの作用も少ないため,評価を難しくしている。東京都で開かれた第35回日本慢性疼痛学会(会長=東京医科大学霞ヶ浦病院麻酔科学・伊藤樹史教授)のシンポジウム「慢性疼痛の評価法 現状と未来」(座長=順天堂大学麻酔科学ペインクリニック講座・宮崎東洋主任教授)では,最近試みられている慢性疼痛の評価法について討論が行われた。そのなかからバイオマーカー,画像診断,ドラッグチャレンジテストについての発表を紹介する。

~8-OHdG,βエンドルフィン~
慢性疼痛制御の指標に

東京医科大学八王子医療センター麻酔科の内野博之講師らは,生体から発するバイオマーカー(生体情報)によって慢性疼痛を評価することを目的として,交感神経ブロック(腹腔神経叢ブロック,上下腹部神経叢ブロック)および麻薬製剤内服が内因性鎮痛機構に及ぼす影響について検討。「8-OHdGおよびβエンドルフィンは,慢性疼痛コントロールの指標として用いられる可能性がある」と発表した。

除痛によりそれぞれ低下,上昇
内野講師らは,癌性疼痛患者17例を対象とし,硫酸モルヒネ徐放剤内服で除痛が得られた 5 例を除く12例に交感神経ブロックを適用したところ,10例には効果があったが,2 例には効果がなかった。

内因性鎮痛機構に関与すると言われるβエンドルフィンの血中濃度(正常値10pg/mL前後)は,神経ブロックが奏効した例では,ブロック前18.5pg/mLから 1 週間後,1 か月後に約 3 倍に上昇した。麻薬製剤が奏効した例では17.8pg/mLから 1 か月後に 2 倍強に上昇した。ブロック後の visual analogue scale(VAS)は,7 ~ 9 から 2 ~ 3 に下がり,除痛に従い,βエンドルフィンが上昇傾向にあった。
 また,疼痛にはフリーラジカルの産生に伴う酸化ストレスが関与すると考えられ,DNAのグアニン基がハイドロキシラジカルの攻撃を受け 8 位の炭素にOH基の結合した8-OHdGが産生されるため,8-OHdGを測定することで生体内のフリーラジカルの産生に伴う酸化ストレスの影響を想定できる。癌性疼痛 2 例を対象に検討したところ,尿中8-OHdGは痛みがあるとき非常に高く,除痛とともに低下することがわかった。

次に,帯状疱疹で来院した急性痛患者12例,慢性痛(帯状疱疹後神経痛)患者20例(リン酸コデイン内服中止群12例,内服群 8 例)において薬物療法とバイオマーカーの変動との関係を見た。全例に肋間神経ブロックまたは星状神経節ブロックおよび非ステロイド抗炎症薬(NSAID)などの鎮痛薬を処方した。急性痛群では,治療経過に伴いVASの低下とともに8-OHdGは低下した。慢性疼痛群では,リン酸コデイン中止群は治療経過中にVASは低下せずβエンドルフィンが中等度の上昇で推移し,8-OHdGは上昇した。リン酸コデインが奏効した例では,治療経過に沿ってVASが低下するとともにβエンドルフィンが上昇し,8-OHdGが低下した。

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同講師は「帯状疱疹後神経痛と癌性疼痛などの慢性疼痛では,内因性鎮痛機構が抑制され,βエンドルフィンが上昇しないうえにフリーラジカルが持続的に産生され,酸化ストレスの指標である8-OHdGが増加すると考えられる。そこに,交感神経ブロック,麻薬製剤の内服を施行すると除痛され,メカニズムは明らかでないが内因性鎮痛機構の活性化に伴うβエンドルフィンの上昇が引き起こされる。さらに,内因性鎮痛機構の活性化によってフリーラジカル産生による酸化ストレスが抑制されて8-OHdGが低下するという機序が考えられる(図)」と述べ,8-OHdGとβエンドルフィンは,慢性疼痛コントロールの指標として用いられる可能性を示唆した。
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by c-dunk | 2006-04-13 14:58 | 痛み | Comments(0)

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