人気ブログランキング | 話題のタグを見る

痛みの共感

他人の痛みを自分の痛みのようにかんじて、思いやる。そのような心のはたらきは、どのような脳の機能によって支えられているのかというお話。
脳の中の人生 茂木健一郎著

イギリス・ロンドン大学カレッジのウタ・フリス博士らは、恋人どうしの男女を被検者とする「痛みの共感」の実験を行なった。紳士の国らしく、痛みを感じるのは男性の役目。男性の手の甲に電極を付け、そこに弱い電流を流して、痛みを感じさせる。それを見守る女性の脳の活動をfMRIで観察した。
 一般に、痛みが人間に及ぼす作用には、大きく分けて、「痛みの感覚」と「痛みの結果生じる感情的な反応」がある。「痛みの感覚」自体は、頭頂葉の体性感覚野を中心に生み出される。普通は同時に起こる「痛みに対する感情的反応」は、前頭葉の前部帯状回を中心に生み出される。
 フリス博士らの実験結果は、興味深いものだった。恋人が痛そうにしているのを見守っている女性の脳では、体性感覚野は活性化していないのに、前部帯状回だけが活性化していたのである。
 前部帯状回は、痛みをはじめとして、自分自身のコンディションや周囲の状況に関するシグナルを前頭葉の前頭前野に送っていると考えられている。それを受けて、前頭前野が脳のさまざまな領域の活動を調整することで、適切な反応が引き起こされる。
 恋人が痛い目にあっているのを見守っている女性の脳の中では、体性感覚野の活動がないにもかかわらず、前部帯状回がいたみを感じているときと同じようなシグナルを前頭前野に送っていたことになる。そのことで、「痛みの感覚」なしに「痛みの感情的な反応」だけが引き起こされていたと考えられるのである。


恋人同士を被検者にした理由は、お互いに相手の痛みに共感する関係がそこにあると考えたからだそうです。いっしょに映画をみたり音楽を聴くことによって共感のネットワークが活性化すかも。
by c-dunk | 2006-02-10 16:21 | 痛み

走る迷走柔整師  ココロと身体はセット 設楽義勝


by c-dunk