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変形性膝関節症2

COMMENTARY(解説)
Maria E Suarez-Almazor

変形性膝関節症は、50歳以上の人に生じる障害の主要原因であり、疼痛、QOLの大幅な低下、大きな経済的損失をもたらす。

薬物治療が奏効しない重症患者に対しては、依然として関節置換術が唯一の治療選択肢である。変形性関節症に対する治療の有効性を追求するにあたって、リスク対利益比を慎重に評価する必要がある。変形性膝関節症患者はほとんどが高齢者で、治療を必要とする他の併存症を有することが多い。さらに、変形性膝関節症はQOLに多大な影響を及ぼすものの、推定寿命を短縮させることはない。変形性膝関節症による死亡率は、治療のみに起因すると考えられる。たとえば、非選択的非ステロイド性抗炎症薬の消化管作用、シクロオキシゲナーゼ2阻害薬の心血管作用、手術の合併症などである。そのため、安全であると考えられる理学療法は、患者と医師の双方にとって魅力的である。

Thamsborgらによる今回の試験の結果では、見かけ上は安全な理学療法であるPEMFについて、初期の有望性は示されたものの、残念ながら変形性膝関節症治療に有効であることは裏付けられていない。しかしこの研究には、今後の議論に値する注目すべき点がいくつかある。第1に著者らは、65歳未満の患者では治療群と偽治療群の間で改善に統計学的有意差がみられ、ある程度の傾向が認められたことを示唆している。しかし残念ながら、統計学的有意性と臨床的意義は別である。統計学的有意性は、とくに複数の比較やサブグループ解析を行った場合に、誤った結果として得られることがある。因果関係が成立するためには、結果の適合性が必要である。なぜこわばりだけに改善が認められ、患者にとってより重要な疼痛や機能には改善がみられなかったのであろうか? さらに、PEMF群で認められた統計学的に有意なこわばりの改善は、0~10の尺度においてわずか0.74であった。サンプルサイズがある程度小さかったため他の有意な影響を検出できなかったとしても、治療群と偽治療群のあいだにみられた傾向の差は、臨床的意義のあるWOMACの改善として報告された最低限度を下回っている。第2に、PEMF群でも偽PEMF群でも、疼痛、こわばり、機能の改善に群内差がみられることが報告されており、これは治療終了後も6週間続いた。この知見は、とくに患者の注意を治療法に集中させるような器具あるいは理学療法(この試験で使用された療法など)を用いた場合には、プラセボ効果が重要となることを裏付けている。それでは、プラセボ効果を引き出して患者のQOLを改善するために、有効ではないが安全な手法を用いるべきなのであろうか? このジレンマやその倫理的基盤は解決されておらず、依然として議論の主題となっている。最後に、PEMFはモルモットにおいて、膝関節面に対する軟骨保護作用を有することは事実である。しかし、これらのモルモットには1日6時間の治療が3カ月間実施されており、このような治療法はヒトではいくぶん非現実的であると考えられる。

現時点ではPEMFを、プラセボとして使用する場合を除いて、変形性膝関節症に対する治療法としては絶対に推奨すべきではない。さらに研究を進めることも1つの選択肢である。動物モデルで得られたデータには説得力があるが、実用目的のためには、今後のヒトでの研究において適用量や治療頻度を変更しなければならないであろう。
by c-dunk | 2006-02-15 19:00 | 痛み

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